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読んだ本の話など

「ラッセル幸福論」の凄いところ

名著として知られるラッセルの幸福論。

 

二部構成になっていて約半分を占める第一部「不幸の原因」が非常に示唆に富んでいます。第2章「バイロン風の不幸」で記されている、

しかし、彼らは自分の不幸を誇りにしている。おのれの不幸を宇宙の本質のせいだとし、不幸こそが教養ある人のとるべき唯一の態度であると考えているのだ。

という部分なんかは、僕たち日本人サラリーマンにありがちな「忙しい自慢」や「寝てない自慢」に通じるところがあるような気がして面白い。

 

そして、続く第二部では「幸福をもたらすもの」では、できる限り幅広く興味を広げること、不幸の原因も宇宙全体に占める位置から見れば大した問題ではない、ということを説いています。

 

ですが単に「細かいことでクヨクヨするな」と済ますでもなく、「そんな事なんてちっぽけな事だよ」とごまかすでもなく、この本の凄いところは最終的に、幸福な人とは

自分が宇宙の市民だと感じ、宇宙が差し出すスペクタクルや、宇宙が与える喜びを存分にエンジョイする 。

としているところ。

 

そういうところが偉大な本なのだろうと思います。

 

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

 

 

珠玉のどんでん返しエンターテイメント「ウォッチメイカー」

興味深い下記の記事で映えあるNo.1徹夜小説に君臨していたこのミステリー。

『スゴ本』中の人が選ぶ、あなたを夢中にして寝かせない「徹夜小説」5作品 - それどこ

 

文庫本で上下巻800ページぐらいあって、かなりのボリュームですが一気にいけます。小説というフォーマットの特性を活かしまくった、台詞の投げ方や場面転換の描き方など、随所に現れる著者のテクニックにより物語はスリリングに進行。

 

そしてとにかく「なんじゃそら!!」となってしまうどんでん返しが凄い。この手の作品紹介で予めどんでん返しについて言及してしまうのは、本当はいけない事なのかも知れない。でもこの小説の場合は大丈夫なぐらい凄い(読めばわかります)ので安心してください。

 

ウォッチメイカー〈上〉 (文春文庫)

ウォッチメイカー〈上〉 (文春文庫)

 
ウォッチメイカー〈下〉 (文春文庫)

ウォッチメイカー〈下〉 (文春文庫)

 

 

1949年に「一九八四年」で書かれてたこの世界?

1949年に「一九八四年」という未来を舞台に書かれたこの小説。

 

戦争とは?自由とは?といったテーマに絶妙に色恋も混ぜていて文学作品として素晴らしいのは言うまでもないのですが、これが何とも今の世の中が向かってしまいそうな方向を示してそうな恐ろしい物語。

 

どなたが書かれたのか文庫本の帯のコメントが秀逸!

今の世界や日本に不安を感じている人へ。この本が現実になりそうです。「事実」が政府によって覆い隠される今の時代。国民がそれを黙認するとどうなってしまうのか。この本を読むとわかります。

ですって。これ見たら読みたくなっちゃいますよね。

 

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

 

 今週のお題「読書の秋」